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zoom RSS 図録『よみがえる明治絵画』

<<   作成日時 : 2005/03/11 17:59   >>

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 午前中、福岡県立美術館に「よみがえる明治絵画―修復された矢田やだ一嘯いっしょう『蒙古襲来絵図』」展を見に行く。明後日が最終日だが、週末は寒くなると予想されている。行くなら今日しかない。

 言葉としては知っていたが、パノラマという手法を初めて実地に知った。南北戦争、戊辰戦争、西南戦争、日清戦争、日露戦争……戦争画とパノラマが密接に結びついている。パノラマは見るものを戦場のただなかに放り込むのである。360度の海戦の場面では、見る者が中央の船をかたどった場所で見る。おもしろい工夫である。

 矢田一嘯はパノラマ画家であり、芸術表現としての絵画ではなく、人目を驚かす、見せ物としての絵画を専門にした。パノラマ画家として、群像を描くことに巧みであった。

 そういう世界に生きた矢田が、元寇を題材に取り組むのは自然だが、なにしろパノラマである。展示するパノラマ館が先行しなければならない。明治中期以降の元寇記念碑建設運動が矢田に活躍の場を準備した。矢田と言えば元寇という、その出会いである。展示されているのは、油絵、軸装の掛け図、幻灯、絵葉書。その作品に、歴史を題材にした記録性よりも、何よりも見せ物としての有用性が追求されているのはむろんである。しかし、可能な限り、考証が行き届いていると見た。

 中には類型的な表現がないわけではないが、もちろん〆切に追われてという、切迫した状況もあっただろう。むしろ、その精緻さには驚かされた。ただ、人物像から、その内面性までが伝わってくるということはない。おそらく、パノラマ画家としては、それは邪道なのであろうから、そういう欠点があるのはしかたがない。ないものねだりというものだ。

 戦場の凄惨な場面が油絵で執拗に再現される。解説には「いわゆる血みどろ絵」とある。そのような分類の仕方があるのだろう。実際、吐き気を催す程に凄惨なのだ。それを「残酷だ」という会場の声が聞こえた。「残酷」とは違う。ただ、戦争の現場を忠実に再現しようとしているだけだ。 

 矢田は福岡市東公園の日蓮銅像台座のレリーフ原画の作者として知られている。台座の周囲をぐるっと取りまく形で銅版レリーフが配置され、その中の日蓮上人の像は信者が触れてぴかぴかに光っている。

 レリーフを知っている人はいても、作者矢田一嘯の名を知る人はまれかもしれない。矢田の蒙古襲来絵図は浮羽郡浮羽町本佛寺蔵。14点全点が福岡県文化財の指定を受けている。このほど修復を終え、記念の展覧会が催されたのである。

 元寇という題材から、当然ながら海戦の場面が多い。海の波、空の雲、海に浮かぶ軍船。題材や手法こそ違うが、私は小松崎茂と重ね合わせていた。

 会場を回っている時、美術館の後藤耕二さんが追いかけてこられた。受付で名前を通じたのだが、あいにく不在だったのである。観覧後、喫茶室で後藤さんと歓談した。後藤さんとは志免町文化財保護審議会で同席している。

『よみがえる明治絵画―修復された矢田一嘯「蒙古襲来絵図」』2005年2月5日発行、福岡県立美術館
 →後藤さんから。
『ウィンズ・風』42号 2005年3月発行、福岡県人権・同和教育研究協議会
 →同会から。

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